平成30年4月より、新しく相続による所有権移転登記の登録免許税の免税措置が設けられました。
はたして相続登記の促進につながるのでしょうか。
まずは、条文を読んでみます。
(相続に係る所有権の移転登記の免税)
租税特別措置法84条の2の3
個人が相続(相続人に対する遺贈を含む。以下この条において同じ。)により土地の所有権を取得した場合において、当該個人が当該相続による当該土地の所有権の移転の登記を受ける前に死亡したときは、平成30年4月1日から平成33年3月31日までの間に当該個人を当該土地の所有権の登記名義人とするために受ける登記については、登録免許税を課さない。
2 個人が、所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法(平成30年法律第〇〇号)の施行の日から平成33年3月31日までの間に、土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、当該土地が相続による土地の所有権の移転の登記の促進を特に図る必要があるものとして政令で定めるものであり、かつ、当該土地の当該登記に係る登録免許税法第10条第1項の課税標準たる不動産の価額が10万円以下であるときは、当該土地の相続による所有権の移転の登記については、登録免許税を課さない。
第1項については、いわゆる数次相続についての登録免許税の免除の話、第2項については、市街化区域外であり、相続登記が特に必要である不動産(評価額が10万円以下)の登録免許税の免除の話になります。
租税特別措置法84条の2の3第1項について
ここでは、第1項について検討します。
下の相続関係図をご覧ください。
【前提条件】
1.Aが亡くなられた方。土地をもっています。Aの相続人はBCDです。
2.その後Dが亡くなりました。Dの相続人は、E、Fです。
今回の軽減措置は、Aが持っている不動産について相続による所有権移転登記を申請する場合に、土地の所有者を「D」とする登記申請では登録免許税が免除になるということです。
しかし、亡くなられたDを所有者として所有権移転登記をする場合って実務上ほとんどないと思うのです。
実務で行う登記
上記事例でAが持っている土地を遺産分割によりDが取得して、その相続人であるE(又はF)がその土地を取得する場合には、1つの申請でE(又はF)を所有者とする相続による所有権移転登記が可能です(昭和30年12月16日付け民事甲第2670号民事局長通達)。
もちろん、Dが取得する所有権移転登記、Eが取得する所有権移転登記と分けて登記を申請することもできます。
しかし、1つの申請で登記が可能なので、分けて相続登記をする人はそうそういないですよね。
1項の免税措置を使える場面
今回の免税措置は、上記のように数次の相続が開始された場合に、1つめの申請の登録免許税を免除するという措置です。
この免税措置を使える場面としては、1件の相続登記で申請できないような、最初の相続で共有持分となる登記をする場合にメリットがあるようです。
その場合には、Dが取得する持分部分についてのみ、登録免許税が免税になるようですね。
この場合、登録免許税の欄には「租税特別措置法第84条の2の3第1項により一部非課税」などと記載します。
しかし、この免税措置が適用される場面はかなりレアケースだと思うのですが、実際はどうなのでしょう。(実務で遭遇したらこの免税措置を忘れてしまいそうです。)
相続登記の推進のために行われている措置ですが、この適用がある登記が何件くらい申請されるのか大いに気になります。